一般社団法人全日本こどもの歌教育協会 編集部
取材・文:浅見聖怜奈

最優秀指導者賞インタビュー | コラム&インタビュー
宮澤 那名子

宮澤那名子先生は、本協会主催の「第4回全日本こどもの歌コンクール」独唱部門 幼児の部にて『最優秀指導者賞』をご受賞されました。
4度目の挑戦でグランプリを受賞した紬希ちゃん。その背景には、長く寄り添い続けてきた宮澤先生の温かな指導がありました。
合唱団での豊かな経験を持ち、「子どもらしさ」を大切にしてきた先生に、紬希ちゃんとの歩みや、レッスンで大切にしていること、子どもたちに伝えたい想いを伺いました。

宮澤那名子(みやざわ ななこ)

NHK東京児童合唱団出身。在団中、数多くの国内外のコンサートに出演。

NHKホールで行われたリチャードロジャーズ生誕100年祭ミュージカル「サウンドオブミュージック」長女リーズル役出演。

教育テレビ番組(Eテレ)「ワンツーどん」「まちかどドミ」等出演。

桐朋学園芸術短期大学音楽専攻、本科、専攻科を経て研究科を修了。

二期会オペラ研修所マスタークラス修了。

64回全日本学生音楽コンクール大学・一般の部入選。

オペラ「魔笛」夜の女王「子供と魔法」お姫様「ラ・ボエーム」ムゼッタ役等出演。

東京モーターショー三菱自動車ブースにてショーに出演。

中学校にて合唱指導、音楽教室にて歌唱指導に勤める。

東京室内歌劇場会員。二期会会員。


―先生の簡単なご経歴と、子どもたちへの指導を始められたきっかけを教えていただけますか?

私は、小学1年生の時にNHK東京児童合唱団へ入団し、高校2年生まで所属していました。当時のN児は活動がとても活発で、国内外のコンサート出演をはじめ、テレビやラジオ、レコーディングなど、今振り返っても贅沢な経験を多くさせていただきました。

こうした舞台経験を通して、歌うことやステージに立つことの楽しさ、面白さを実感し、自然と声楽の道を志すようになりました。桐朋学園芸術短期大学を経て二期会オペラ研修所で学びを深め、現在に至ります。

子どもへの指導を始めるきっかけは、先輩講師が産休に入られる際に代行を頼まれたことでした。その後、ご縁があり同じ教室で講師として指導を続けています。


—子どもたちを指導する際に、心がけていらっしゃることはありますか?

私は、何より「子どもらしさ」を大切にすることを心がけています。私自身、NHK児童合唱団で指導を受けていた先生方が、作り込みすぎた表現よりも、子どもたちの素直で自然なエネルギーを尊重する方針でした。その教えが今も自分の根底にあります。

そのため、生徒に対しても、その年齢ならではの伸びやかな力や感性を大切にしたいと思っています。特に紬希ちゃんには、肩の力を抜いて自然に歌うことを心がけるよう伝えてきました。過度に作り込まず、自然体でいることが大切だと感じています。


—音楽・歌を学ぶ子どもたちに、どんな力を身につけてほしいと考えていますか?

そうですね。「積み重ねの大切さ」を知ってほしいと思っています。

紬希ちゃんは第1回からこのコンクールに挑戦していて、最初は銅賞、第2回では何もいただけず、第3回で銀賞、そして今回4回目でようやくグランプリ・金賞を受賞することができました。

この道のりの裏には、努力を積み重ね続けた経験があります。この経験は、歌の道に限らず、これからどんな道に進んでも必ず役に立つと信じています。


—結果が出るまで挑み続けるためには、精神的な強さも必要だと思います。

紬希ちゃんは本当に素晴らしい子で、一度も弱音を吐きませんでした。オーディションに落ちて涙することはあっても、「もうやめたい」「もう嫌だ」という言葉は絶対に言いません。

家での練習もしっかり続け、「努力の結晶」によって今回の結果があります。何より印象的だったのは、金賞を発表された瞬間の第一声が「これで那名子先生に最優秀指導者賞をあげられる」であったことです。

もちろん本人のグランプリを目指す強い気持ちがあったことは確かですが、家族や私への感謝の気持ちも原動力になっていたことがよく分かる場面でした。

長く一緒に歩んできたことで、強い信頼関係が育っていたことも大きかったと思います。


—もちろん、グランプリを目指すことが全てではなかったと思いますが、並々ならぬ想いで歩んできたこのコンクールでの道のりで、それでもグランプリを取るために第1回以降4度の挑戦の中で、改善された点はありますか?

最初の頃の紬希ちゃんは、パワー重視の歌い方でした。しかしコンクールに挑戦する中で、より高い評価を得るためには音楽的なテクニックも必要だと感じ、声楽的な技術と表現のバランスを意識して指導するようにしました。

とはいえ、コンクールのために“作り込む”のではなく、子どもらしさを損なわないよう注意しながら、審査員が重視するポイントも押さえつつ、必要な技術を少しずつ積み重ねていきました。


—今回、4度目の挑戦で見事、グランプリ・金賞、ベヒシュタイン賞、審査員長賞、聴衆賞(独唱部門幼児の部)をご受賞された紬希ちゃんの演奏はとっても元気でパワフルな表現が印象的でしたが、子どもたちから表現力を引き出すうえで大切にしていることは何でしょうか?

歌の表現力とは、「言葉を丁寧に伝えること」だと考えています。

初めて聴いた人にも内容がきちんと伝わること、それが最も大切です。子どもでも、歌詞の意味をしっかり理解し、会話のように自然に言葉を届けられれば、それだけで表現力豊かな歌になります。

そのために、音読やリズム読みを取り入れ、言葉を“生きた詩”として伝えられるよう指導しています。


コンクールにおける選曲は非常に重要だと感じています。紬希ちゃんのこれまでの4回の挑戦の中で、選曲はどのようにお考えでしたか?

私は子ども向けの曲の引き出しに自信があります。長く在籍したNHK児童合唱団で触れた膨大なレパートリーが、今の自分の財産になっています。

コンクールでは、その子の声質・音域・性格、そしてコンクールの種類に合わせ、最も魅力が引き出せる曲を選びます。

紬希ちゃんの場合は、彼女の持っている音域の中でよりよく響く高音域が多く含まれ、元気いっぱいの表現が生きる曲を選びました。発表会では子ども自身の好きな曲を優先しますが、コンクールでは私が提案することが多いですね。


こうしたコンクールは順位がつく厳しさもあると思います。一生懸命に取り組んでいるからこそ、結果が伴わなかった際には落ち込んでしまうこともあると思いますが、それでもコンクールに挑戦する意義は何だと思われますか? 

確かに順位がつくことは、時に残酷に感じられるかもしれません。しかし、真剣に取り組んでいるからこそ、自分の実力を客観的に知る良い機会でもあります。

悔しい思いをすることもありますが、逃げずに挑戦することで、小さな成功体験を積み重ねることができます。社会に出れば必ず評価される場面がありますので、その予行練習としても価値のある経験だと思います。


—第4回コンクールは、第2回に続き「完全オンライン」審査でしたが、オンライン審査についてはどう感じていますか? 

参加機会が広がるという意味で、とても良いと思います。たとえば日本にいた時、当コンクールを受けていた生徒さんがドイツへお引越しされてしまいましたが、オンラインがあることでドイツから再び挑戦することができました。

オンラインならではの工夫も必要ですが、画角や見せ方を考え、画面越しにも魅力が伝わるよう意識して撮影に望んだことはとても良い思い出です。


—宮澤先生の思う、「歌の魅力」を教えてください。

実は今、夫の仕事の関係でタイに住んでいます。日本を離れてみて気づいたのは、日本の四季を表現した歌の美しさです。

景色や温度感、空気感まで映し出すような日本の歌は、世界に誇れる文化だと思います。日本人だからこそ理解できる繊細な心の動きを、歌として大切に受け継いでいきたいと強く感じております。子どもたちにも、そうした歌の魅力にたくさん触れてほしいと願っています。

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